多摩川源流再生プロジェクト」に関する

     自然再生協議会準備会の設置について(試案)

 

                                                平成15年11月27日

                                                山梨県小菅村

                                                多摩川源流研究所

(1)自然再生法の基本理念と特質について
 

 政府は、昨年12月の臨時国会で「自然再生推進法」を制定して平成15年1月1日をもって施行した。

この法律において「自然再生」とは、過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことであると定義し、

その事業の推進にあたっては、当該地域の多様な主体が参加した自然再生協議会を設置し、

河川・湿原・干潟・藻場・里山・里地・森林その他の自然環境を保全し、再生し、もしくは創出し、

その状態を維持管理する諸事業を実施するよう定めている。

 また、この法律は、「健全で恵み豊かな自然が将来の世代にわたって維持されるとともに、生物の多様性の確保

を通じて自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与すること」を基本理念に掲げている。

 特にこの法律では、NPOを始めとする地域の多様な主体の参画と創意による地域主導の新たな形の事業と

位置づけているのが大きな特徴である。ここでは、地域住民、NPO、専門家、関係行政機関などで協議会を組織し、

その場で自然再生に関する全体構想・マスタープランを作成し、自然再生事業実施計画の案を協議して、

事業の実施に係わる連絡調整をこの協議会で出来ることが定められている。要するに流域の市民や源流域の住民が、

大いに知恵を出し力を発揮して、関係自治体や関係省庁と連携し、透明性を確保しつつ自主的かつ積極的に

自然再生の基本理念にそった事業を編み出し、むらづくりに活かしていける道が開かれたことを意味している。

 
(2)多摩川源流再生プロジェクト事業の重要性について
   森林は生物多様性保全の役割をもっている

多摩川源流域には、広大な森林が存在する。森林は人間生活に欠くことのできない多くの重要な機能を持っている。

と同時に様々な生き物に住処を提供し生物多様性を保全する重要な役割を持っている。

 また、この源流には人間の進入を阻む急峻な山々が存在し、そこには手つかずの自然が広範に残されている。

東京都の水源涵養林が広がるとともに都民の水瓶である水道専用ダムである小河内ダムが存在する。

水源涵養林と水道専用ダムを双方とも備えた源流は日本では他に例を見ない。

 ところで、わが国の森林の現状は極めて厳しい現状にある。それは、安い外材の輸入が進み、

自給率が20lを割るという典型的な外材依存型にあって、近年にあっては、木材利用の最終商品である

住宅がそのまま輸入され、国内の大工や左官にも深刻な影響を与えるなど日本の伝統的な木の文化が大きな危機に直面している。

 また、こうした木材価格の低迷は、スギやヒノキの人工林の保育・管理に暗い影を落とし、水源である森林の荒廃がすすみ、

土砂崩れや土石流などの災害を誘発しつつある。

小菅村や丹波山村の手入れの行き届かないスギやヒノキなどの一斉林を歩いてみると、間伐は放置され、陽の光が射し込しこまず、

薄暗いうえに、むき出しになった地表は草木が極端に減少し、獣たちの痕跡のない森林が数多く存在する。

 
   生物多様性の弱体化は将来に悪い影響を与える

ここでは、人間の不作為が種の減少や生態系の分断を引き起こしている。こうした現状がこのまま放置されれば、

生物多様性の保全のうえから取り返しのつかない重大な事態を迎えざるを得なくなる。

生物多様性や健全な生態系の弱体化は、多摩川の水質・水流、ひいては水循環にも関わって、

多摩川流域全体に将来にわたり悪い影響を与えることになろう。こうした現状を科学的に調査・分析し、

放置することなく直ちに改善に向かって足を踏み出すことが今強く求められている。

 
   貴重な自然環境保全は源流の重要な使命

これは単に人工林の再生のレベルにとどまらない自然環境全体の保全に関わる重要な課題といえよう。

人工林に関しては思い切った樹種転換や、間伐による健全な森林整備をめざし、

生物多様性を保全する観点から、自然性の高い森林に育てあげることを目標に管理水準を高めていく。

さらに、源流域に広がる手つかずの自然や天然林、急峻な山々や渓谷の織りなす変化に富んだ地形、

四季折々の美しい景観などのかけがえのない貴重な自然環境は、多摩川流域における上下流連携を

図りながらしっかりと守り育て、後世に引き継ぐことは源流域に科せられた重要な使命といえよう。

 こうした現状認識に立って、私たちは、多摩川流域の市民や、自治体、専門家、企業などに広く呼びかけて、

1)源流の様々な資源の調査・研究と情報の発信、

2)自然環境保全・森林再生、

3)環境学習・源流体験、

4)源流文化再生、

5)源流の暮らし・景観再生、

6)上下流連携・多摩川流域文化圏再構築−

の6つを柱とする総合的な観点に立った多摩川源流再生プロジェクト事業を実施する。

この事業を自然再生推進法に基づく事業として展開する立場から自然再生協議会設置に向けて取り組みを進めたい。

 
(3)自然再生協議会準備会の設置にについて 
 

自然再生協議会の立ち上げに関しては、地元や流域の主体、国の関係機関、県及び市町村の

三者が一体となって協議会を構成すること、また、事業の趣旨を広く公開し、共に汗をかいてくれる

仲間は積極的に受け入れることなどに留意し、準備会でよく審議して自然再生協議会を設置し、

広範な人々の声を反映させて基本計画を策定していくことになる。

 自然再生協議会準備会の構成メンバーは、当面、次の関係団体、関係機関などを予定しているが、

その他にも昨年の「水と森と食の祭典」実行委員会(19の市民団体)のメンバーには広く参加を働きかけていく。

 基本計画や具体的な事業計画に関しては、自然再生協議会の場で各団体・各界から提案していただき、

審議して確認していくことになるが、源流域の課題としては、源流域の様々な資源の調査と保存、

総合的な林相調査の実施、生物多様性の確保とさまざまな生物の住処を提供できる森林づくりを目的に

人工林を対象にした「森林再生プロジェクト」事業の展開、親子や市民を対象にした「環境学習」の推進、

多自然型の川づくりの検討と推進、放棄された畑の再生や現有農地の有効利用、農村景観形成、

上下流の交流と連携の強化・多摩川流域文化経済圏再構築などの諸事業があり、長期的な視野に

立って源流のむらの活性化事業に積極的に取り組む予定である。

 
自然再生協議会への参加予定団体
 
山梨県小菅村

山梨県丹波山村

多摩川源流研究所

小菅村村議会

小菅村教育委員会

財団法人 水と緑と大地の公社(小菅の湯) 

北都留森林組合小菅事業所

小菅人を育む会

小菅村観光協会

小菅村漁業協同組合

小菅村養殖組合

100l自然塾

小菅村建設研究会  

(流域団体) 東京農業大学森林政策学研究室、造林学研究室

NPO法人多摩川センター(国分寺市)

NPO法人多摩川エコミュージアム (川崎市)

多摩川と語る会(川崎市)

(行政機関) 

山梨県森林環境部森林整備課

山梨県大月林務環境部(森づくり推進課)

山梨県大月建設部(河川砂防管理課)

山梨県大月農務部(農村整備振興課)

山梨県地域振興局企画振興部地域振興課

国土交通省京浜河川事務所(河川環境課)

林野庁森林整備部(計画課)

環境省自然環境局